自然に伝統美に触れられる着物・美術品のお店
古きを訪ねる 花起や
創の実 自由が丘
JIYUGAOKA
OWNER
松下 由起子
MATSUSHITA YUKIKO
着物や骨董との特別な出会いを楽しむ。「花起や」が、その場所となるように。
「花起や」は着物を中心に骨董や絵画、そして手作り小物など私がセレクトした品を販売しています。
特に品質の良い伝統的なもの、そして物語のあるものを選ぶようにしています。
着物や骨董は自分には馴染みがない、縁遠いと感じる方が多いかもしれません。
けれどももっと気軽に、自由に楽しんでいただきたいと思います。
何故なら日本の伝統美は本当に素晴らしく美しく、
私たちの生活を潤してくれるものだからです。
「花起や」という店名は、3月後半に降る雨を指す「花起こしの雨」という素敵な言葉から考えました。
この雨で眠っていた芽が起き、やがて花を咲かせる。
同様に、花起やでの出会いを通してお客様に自分の花を咲かせてもらえるような、
そんな楽しいワクワクのあるお店にしていきたいと思っています。
PICK UP

柄に込められた物語が着物の魅力の一つ
この着物は「間垣」が描かれた、加賀友禅の色留袖です。「間垣」とは細い竹を隙間なく並べて作る、強風や日差しを防ぐ垣根のこと。加賀友禅の産地である能登地方の方々の知恵で生まれたものを題材とし、そこに花々が満開の様子を描いています。お祝いの気持ちを表す色留袖の柄としてとても素敵です。更に帯はどんな柄でどんな色のものを合わせたらよいか、など考えていくと、着物の物語におのずと想像を巡らせ、沢山楽しむことが出来るのです。
OWNER INTERVIEW

松下 由起子
MATSUSHITA YUKIKO
自分が大好きな着物や骨董品の世界をもっと多くの方に楽しんでいただきたくて
着物を着る楽しさを、より多くの人に
東京都チャレンジショップ「創の実」(以下「創の実」という) 自由が丘で、着物や骨董品、手作り品などを扱う「花起や」をオープンしました。直接買い付けを行う分、高品質の商品を価格を抑えてご提供することが可能です。また、「自分では着物を着ることができない」という方のために着付けを行ったり、着物のレンタルも手がけるなど、お客様に着物や着物文化を気軽に楽しんでいただけるお店を目指しています。

着物を楽しむにはいくつものハードルがあると実感したのが、まず「着物を着ていくような場所がない」とおっしゃる方が多い事です。着物はフォーマルな印象が強いこともあると思います。そして「着物は高価」というイメージがあり、滅多に着ることがないから、「着方が分からない」ということもあるでしょう。こうしたハードルを下げるため、花起やでは例えば訪問着で3〜4万円台と、お求めになりやすい価格帯の着物をご用意し、着付けやレンタルにも対応いたします。更に着物はあるけど帯が合わない、などのご相談など、着物全般のお悩み解決もお手伝いをさせていただきます。
また今後は、着物で歌舞伎を観劇するといったプランや様々なイベントを行っていきたいと考えています。これらを通じて、「着物が身近にある暮らし」の楽しさや豊かさを、お客様に感じていただきたい。それが、「花起や」が目指すものです。
起業について学ぶ中で出会った「創の実」
そもそも私と着物の出会いは、幼少期に遡ります。着物だけでなく伝統文化や日本舞踊、骨董などが自然と家の中にある家庭で育ったこともあり、古き良きものは身近な存在でした。大人になり趣味の範囲で着物や骨董を集めたり楽しんだりしていました。しかし質のいい着物は勿論とても高価です。その一方で、素晴らしい手仕事の貴重な着物が安価で市場に出ている。このままでは日本文化の素晴らしさが次世代に伝わらず、無くなっていってしまうと感じました。もっと多くの方が着物や骨董の美しさを気軽に楽しめる場所があれば、こうした状況も変わって来るのではないかという想いから、起業を思い描くようになりました。

そこでまず、公社が丸の内で運営する「TOKYO創業ステーション」に足を運び、起業のための相談をしたところ、先生と一緒に事業計画書を作成していくことになりました。そしてその過程で「創の実」のことを教えてもらい、応募を決心しました。
分からないことだらけで不安もありましたが、やると決めたら突き進む性格でもあり準備を進めました。しかし経営に関して、細部まではあまり検討が出来ないままオープンの日を迎えたと思います。集客の計画性や資金の効果的な使い方など日々課題が出てきますが、公社の方やコンサルタントの方々から教わることができ、相談にも乗ってくださるのでとてもありがたいです。また一緒にオープンした2人の「創の実」メンバーの存在が心強いです。何かと相談をしたり、情報共有したり。3店舗合同で週末にイベントを開催し、それぞれのお客様が他のお店にも足を運んでいただけるようにもしていきたいなど、一緒に成長できるよう頑張ろうという気持ちです。偶然ですが、真珠、手仕事の日用品、着物という親和性の高いお店が揃ったことも良かったと思っています。
「将来はカフェも」と、夢は広がる
自由が丘は落ち着いたお洒落な雰囲気の街です。この「創の実」自由が丘で半年、継続審査を経て最長1年間経験を積み、その上で自分の店を持つのが目標です。着物を着るということのハードルを下げたい、もっと身近に伝統美を感じてもらいたいという想いがあるので、本格開業後の店舗ではカフェもある店内にして気軽に立ち寄れる雰囲気にするのが夢です。骨董品、絵画などを楽しみながらお茶を飲んで、更に着物に親しんでいただけるような店が理想です。そのためにこれから1年をかけ、店舗運営のノウハウを身につけなければなりません。

現在、苦労しているのは集客です。着物や骨董に元々興味のある方は入って来てくださいますが、観光やお買い物の方ではなかなか見てもらえません。ここでよい着物や面白い一点ものが見つかる、レンタル着付けもできると知ってもらうためには、様々な手立てが必要だと感じています。SNSの発信の仕方やイベントの計画など、実施して振り返りをし、分析していくことが重要と感じています。
またお客様とのコミュニケーションをとても大切にしたいと考えています。留袖に合わせる帯の提案をさせていただいた方から、次にご主人様の着物を見て足りないものを揃えて欲しいとの依頼を受けたことがあります。商品を購入いただいて終わりではなく、また次にお困りのことがあった時や必要な物が出てきたときに、ご相談に乗れるような店でありたいと思います。その為にも、ご要望にお応えできる引き出しをたくさん持てるよう、勉強をしていきたいと思っています。
PROFILE
着物はもちろん、骨董品や日本舞踊などが身近にある家庭で育ち、幼少期から伝統美に興味を持つ。大学卒業後は小学校教諭などを経験。出産を機に家庭に入るが、子どもが成長したタイミングで着付けの仕事に従事、着付師の資格を取得し修行を重ねる。一方、古き良きものへの情熱は変わらず、京都などへ足を運び、品質が良い一点ものを蒐集するように。これを提供してほっとくつろいでもらえる店を持ちたいと考えるようになり、公社が運営する「TOKYO創業ステーション」で起業に関するノウハウを学び始める。その中で「創の実」のことを知ったのが、今回の応募のきっかけ。2025年1月、着物や骨董品・手作り品の店『花起や』をオープン。